Certified ScrumMasterトレーニング

東京で開催された2日間のCertified ScrumMasterトレーニングに参加してきた。講師、参加者ともにとてもポテンシャルが高く充実したトレーニングだった。トレーニングを通して多くの疑問点がクリアになり、誤った解釈をしていたことに対しても正しい理解を得ることができた。こんなに満足感のあるトレーニングはそう滅多にあるものではない。あと1日増やして欲しかったぐらいだ。このトレーニングは来年もまた日本で開催されるらしいので、興味のある方は参加してみることをお勧めする。

2日間の内容はid:yachさんがまとめられている。とてもよくまとまっているので是非参照されたい。

レーニング直後に感じたのは、Scrumはシンプルなルールのもとに作成されたフレームワークだが、自由度が大きく組織やチームのコンテキストに合わせて適切に実装しないといけない。この実装こそが大変なのだということ。

でも一呼吸おいて2日間をふりかえってみた結果としての僕なりの解釈は少し違っていた。

Scrumはアーキテクチャベースラインだ。

Scrumは実際に動く開発プロセスの骨格でスタートポイント。問題が発生すれば、チームは自分たちのコンテキストに応じて、こうすればチームはうまくいくだろうというテストを書く(解決策を考えてそれを実施することを決断する)。これを次のイテレーションで走らせて、それが成功するように実装する(チームのプロセスを改善する)。

以降の文章の中で、テストと実装という単語は上記の意味として書いていくのであしからず。

テストが失敗すれば、チームはなぜそのテストが失敗したのかを考え、実装をやり直すのか、そのテストを書き直すのか、捨てて新しいテストを書くのかを選択する。テストが成功すれば、そのテストはテストスイートに組み込まれて毎回のイテレーションで実行され、セルフチェックが行われる。

ここで重要な役割を果たすのがScrumMasterだ。彼(彼女)は、チームに問題が発生すれば、チームに対して「新しいテストを書いてみたら?」と促す。チームは問題について考え、問題を解決するためのテストを書く。そのテストを書いたのはチームなので、失敗しても成功してもそれはチームの責任だ。こうすることでチームは自己組織化されていく。

ScrumMasterは新しいテストが必要なことをチームに知らせるが、自分でテストを書くことはない。ScrumMasterは懐に多くの解決策を隠し持っているかもしれないが、それを直接チームに提示したりはしない。あくまでチームに考えるきっかけを与えるだけだ。

人は失敗から多くを学ぶ。Scrumはこの学習のチャンスを奪わない。多くの開発プロセスが失敗しないようにするためのプロセスなのに対し、Scrumは失敗を成功の糧として抱擁し、組織やチームの中で成長させていくような開発プロセスなのである。

Scrumは現状の問題を浮き彫りにする。チームは解決策を考えて実施することを決断する。実施した結果、もし失敗したとしてもその失敗から学習し、次の成功に繋げるために改善する。僕はこれが多くのプロジェクトでScrumが成功している理由のひとつなのではないかと思っている。

あと、Scrumは成果主義だ。DONE(完了)の定義をチームで確立し、DONEの定義を満たしていないものは成果とは見なさない。例えばあるイテレーション(Scrumではスプリント)で、3つのストーリー(Scrumではプロダクトバックログアイテム)を選択したとする。イテレーションの終了時にこれらのストーリーがそれぞれ90%の進捗であったとしても、チームの速度(ベロシティ)は0になる。完了していないものは成果とみなさないという厳格な成果主義なのである。

成果主義であるがゆえに、進捗のトラッキング方法にも特徴がある。Scrumでは作業実測時間は意味を持たない。その日にどれだけの時間を作業に費やしたかではなく、あとどれだけあれば完了するのかという単位で進捗をトラッキングしていく。これによって、成果に対する進捗が測定できるというわけだ。

もしScrumに興味を持っていただけたなら、以下の書籍を手に取ってみることをお勧めする。

アジャイルソフトウェア開発スクラム (アジャイルソフトウェア開発シリーズ)

アジャイルソフトウェア開発スクラム (アジャイルソフトウェア開発シリーズ)

そして実際にScrumを始めてあなたがScrumMasterのロールになったなら、1回目のスプリントレビューの前日には以下の書籍を片手にスプリントレトロスペクティブの計画を立てることになるだろう。

アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き

アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き

最後に、来年のCertified ScrumMasterトレーニングに参加することもお忘れなく。

#トレーニング受講前に見た資料を元にちょっと絵を描いてみた。